「憲法」と聞くと、日常生活にはあまり関係のない、難しい概念をまとめた法律というイメージがあるかもしれません。ともすれば、「私たちを縛る決まりごと」のように誤解している人もいるのではないでしょうか。
日本弁護士連合会によると、憲法とは「国民の権利・自由を守るために、国がやってはいけないこと(またはやるべきこと)について国民が定めた決まり」とされています(出典:憲法って、何だろう?)。
この『kenpo game』は、私たちが「あたり前の日常生活」を送る上で、実は憲法によって守られている「いろいろな権利」があることを、改めて楽しく学ぶことのできる協力型ボードゲームです。
ゲームの舞台は、悪い魔法使いによって憲法が消されてしまい、さまざまな暮らしの権利が失われてしまった日本。つまり、「憲法がない世界」です。それを市民の力で憲法を復活させ、都市を防衛する<kenpoバリア>を張ることで、失った権利を復活させて12の都市を防衛していくという設定になっています。
このゲームのポイントは、プレイヤーが互いに協力して解決を目指すことです。日本中に発生したさまざまな問題は一人では解決できないため、それぞれの現在位置や役割をうまく活かしてバリアを張らないといけません。自分の順番が来ると全国を転々と移動し、時には自分が持つ<キャラクターカード>の特殊な効果を発揮しながら全員で12の都市の防衛を目指します。
ゲーム内で扱うカードにはさまざまなものがありますが、中でも<poorカード>と呼ばれるものが、もっともこのゲームの学びにつながっています。それぞれの都市ごとに置かれるpoorカードには、「憲法のある一つの条文が失われてしまった場合に起こる暮らしの状況」が描かれています。たとえば、下記のような事例です。
[仙台]に置かれるpoorカードの例
- お金がなくて、大切な、自分の子どもを売りました。
- 寝る場所は、いつも駅のホームです。
- 一年中、Tシャツしか着ることができません。
- どんなに寒くても、エアコンやコタツは使えません。
[札幌]に置かれるpoorカードの例
- 3才の時に受けたテストで人生の全てが決まります。
- 男の子は体育ができますが、女の子は応援だけです。
- 親の仕事で学校が決まります。
- 授業は先生が話したことを丸暗記だけです。質問はダメ。
さて、上記の状況は、どの憲法の条文が失われた結果だったでしょうか。
ゲーム内では、無事にバリアが張られると、各都市が失っていた権利が憲法のどの条文だったのかを記載した<成功カード>へと置き換えられます。
仙台の場合は、[憲法25条]を失くした状況の例で、どのような環境や立場の人に対しても、人間らしい最低限の生活を保障するよう求める「生存権」に関する内容です。成功カードには「みんな人間らしく生きていくことができるよ」と書かれています。
札幌の場合は、[憲法26条]の教育を受ける権利・教育を受けさせる義務の内容で、成功カードには「知って学んで考えることができるよ」と書かれています。
このように<poorカード>と合わせることで、自分たちの権利がどのような憲法で守られているのかを学ぶことができる作りになっています。
私たちは、憲法について見たり聞いたりする機会はあっても、憲法の「存在意義」については実際によく分かっていないものです。また、<改憲>か<護憲>かなど、いわゆる「政治的な観点」から語られることが多く、憲法そのものを考えたり、語ったりする機会は少ないのではないでしょうか。
ぜひこのゲームを通じて、憲法によって守られた日々の暮らしを擬似的に失うことで、そもそも憲法がどのような役割を担った存在なのか、その根幹を学ぶ機会にしてみてください。
学びのポイント
- 憲法の具体的な条文の内容
- 日々の暮らしが、さまざまな権利によって保障されていること
対象:小学3年生以上
紹介したボードゲーム