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#メディアリテラシー学

「闇バイト」の危険性を疑似体験する没入型体験学習プログラム

レイの失踪

メディアを通じて「闇バイト」という言葉を目にする機会が、ここ数年で急増しています。闇バイトとは、高額な報酬と引き換えに、犯罪行為をするアルバイトのことで、SNSで募集されるケースが多く、近年では一般的なアルバイト募集の求人サイトにも募集が紛れ込むようになりました。

闇バイトの実態は、特殊詐欺(オレオレ詐欺)や強盗・窃盗などが主の犯罪で、その実行役として若者が巻き込まれている現状があります。警察庁の統計によると、闇バイトの逮捕者の約80%を10代・20代が占めていて、「闇バイトの経験がある・または知人に経験者がいる」と答えた割合は「1クラスに2人」、SNSで怪しい勧誘を受けたことがある高校生は、実に4割を超えています。

このような闇バイトの状況がある中、学校や家庭で子どもにその危険性を理解させたいと思っても、一般的な授業や注意喚起だけでは、“自分事”として捉えてもらうのは非常に難しいのではないでしょうか。

そこで今回ご紹介するのは、現役大学生によるベンチャー企業Classroom Adventureが開発した闇バイト対策教育プログラム『レイの失踪』です。参加者は失踪した人気配信者・レイの行方を追うゲームを通して、闇バイトに巻き込まれるプロセスを疑似体験します。現実のネット社会を模したSNSや検索エンジンを駆使して手がかりを集め、レイの失踪の裏に潜む闇バイトの真相へと迫っていく。そんな没入型の学びが特徴です。

学びのポイント

  • 日常で使うSNSや検索サイトなどのツールをもとに、ネット社会のリアルをそのまま体験できる
  • 闇バイトの手口だけでなく、「なぜ応募してしまうのか?」「なぜ断れなくなるのか?」を追体験しながら理解できる
  • ゲームとレクチャーの二段構成で、体験と知識をつなげて学習できる

対象

  • 10代~

昨今、SNS上では「誰でもできる」「高収入」を謳った求人を目にする機会があります。しかしながら、その中には犯罪に関与させる「闇バイト」が紛れ込んでおり、金銭的に余裕のない10代~20代が軽い気持ちで応募してしまい、事件に巻き込まれるケースが多発しています。

そもそも「闇バイト」とは、どのような仕組みで若者を巻き込む犯罪なのでしょうか。

さまざまな手口が存在していますが、一般的なものは闇バイトに応募した後、相手から匿名性の高いメッセージアプリへ誘導され、「個人情報の送付」を要求されます。個人情報を握ることで、家族へ危害を加えるといった脅迫の材料にし、気がつくと離脱できない状況がつくられていきます。

問題は、闇バイトの勧誘の多くが、一見して「危険が分かりにくい形」で始まり、身分証の提出や顔写真の送付など、少しずつ退路を断つような構造になっていることです。軽い気持ちで応募した結果、闇バイトから抜け出せなくなってしまうケースも後を絶ちません。

こうした巻き込みのプロセスを、物語とゲーム体験を通じて疑似体験できる体験学習プログラムが『レイの失踪』です。

『レイの失踪』の特徴

  • プレイヤーは手持ちのスマホやタブレット端末からプレイすることができる
  • 個人戦でもチーム戦でも実施可能
  • 出張授業、オンライン教材などさまざまな形で体験ができる
  • 各ステージをクリアするごとに次へと進む、段階式のゲーム設計
  • プログラムは、体験する「ゲームパート」と、講師による「レッスンパート」の2部構成になっている

プレイヤーは、人気配信者であるレイの失踪の謎を追いかけながら、SNS上のやり取りや投稿を手がかりに真相を探っていきます。前半のゲームパートでは、ゲームを通して闇バイトの勧誘の手口を疑似体験し、後半のレッスンパートで闇バイトの危険性を学ぶ二段階構造になっていて、単なる座学だけでは得られない学びが特徴です。

『レイの失踪』:ゲームパート

『レイの失踪』のゲームパートは、人気動画配信者「レイちゃんねる」のメインメンバーであるレイが姿を消すところから始まります。高校生ながら人気を集める「レイちゃんねる」は、レイと動画編集担当、企画担当の3人体制でチャンネルを運営していましたが、あるときレイからの連絡が突然途絶えてしまいます。

プレイヤーは、レイから連絡が来なくなった残されたメンバーと同じ立場になり、まず手元の端末を通して失踪の手がかりを探すことが求められます。その過程で、メンバーとレイはSNS上だけのつながりで、レイの本名や居住地といった個人情報を何も知らなかったことに気づかされます。

画面に表示される「SNS」「メッセージアプリ」「検索エンジン」といった現実世界と類似したアプリを行き来しながら、まずはレイの裏アカウントにログインするための情報を集めます。いくつもの投稿ややり取りに散らばったヒントから、ステージごとに設定された目標をクリアすると、次の段階へと進んでいきます。

裏アカウントのログイン情報を見つけ出した後は、実際にアクセスして、レイの過去の投稿やダイレクトメッセージでのやり取りを遡っていきます。裏アカウントのダイレクトメッセージには、レイが“あるバイト”の募集に応じていた様子が明らかになります。

身分証、顔写真などが送信されており、やがてやり取りの舞台はSNSから匿名性の高いメッセージアプリへと移行します。残されたメンバーとしてプレイしている参加者は、状況がどんどん切迫していくのを感じることができ、匿名性の高いメッセージアプリでは「脅迫電話」がかかってくる様子も体感できます。

また物語の中盤では、レイの状況を把握したメンバーたちが、警察相談専用電話『#9110』へ相談する場面も出てくるなど、ゲームを通して実社会でリアルに役立つ知識を学ぶ仕掛けにもなっています。

しかし、警察に電話をかけても「相手の名前が分からないと対応が難しい」と告げられる現実に直面し、そこから闇バイトを斡旋した相手を特定するための探索へと、ゲームは新たな展開を見せていきます。

その後、ようやくレイと連絡を取れるようになり、プレイヤー自身も物語は一件落着したと安心したのも束の間、闇バイトの真相はこれでは終わりません。犯人だと思っていた実行役の上には、実は何人もの指示役がいて、逮捕された人物もその一人に過ぎないことが分かり、物語はさらに真相へと迫っていく…という奥深いストーリー展開です。

このように、画面の中でひとつずつ明らかになっていく事実は、実際の被害事例をもとに作られているため、「なぜ応募してしまうのか?」「どうして抜け出せなくなるのか?」をリアルに実感できる構成となっています。

『レイの失踪』:レッスンパート

ゲーム終了後は、「レッスンパート」へと移ります。プログラムの開発者であるClassroom Adventureのメンバーが講師となり、ゲーム内でプレイヤーが見てきたメッセージやシーンと現実社会とを結びつけながら、闇バイトの実態を解説していきます。

  • 狙われない
  • 騙されない
  • ハマらない

この3つのポイントをもとに、闇バイトは遠い世界の犯罪ではなく、SNSが生活の一部となった若者のすぐそばにあるリスクであることを体験と知識の両面から理解を深めます。

SNSにおける情報発信のリテラシーの重要性についての解説もあり、万が一闇バイトに応募してしまった際の対処法についてもゲームとレッスンを通じて学んでいきます。

『レイの失踪』は、東京都のスタートアップコンテスト『Tokyo Startup Gateway 2024』でグランプリを受賞。現在、多くの学校・教育機関で導入されています。

情報リテラシーは、この時代を生きていく上で必須のスキルです。講座形式で学ぶだけでなく、ゲームを通して疑似体験するからこそ、数字や知識だけでは届かない「自分事」として闇バイトを捉えることができるのではないでしょうか。

紹介したゲームコンテンツ

レイの失踪

掲載日
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