このコンテンツは、1945年から1998年の間に、「いつ」「どこで」「どの国」が核実験を行ってきたのかについて知ることができるアニメーション動画です。文字を使わず、光と音の点滅だけで表現する本作品は世界の、極めて深刻で、現在進行形の問題を、言葉の壁を超えて学ぶことのできるコンテンツとなっています。
学びのポイント
- いつ、どこで核実験が行われてきたのかを学ぶ
- どの国が核実験を行ってきたのかについて知る
- 世界の出来事と核実験の関係を学ぶ
日本の平和学習の授業において、「広島・長崎の原爆投下」はおそらく多くの学校で教える内容だと思います。日本国外でも、“唯一の戦争被爆国”である日本の歴史は、「ヒロシマ」「ナガサキ」の名称でよく知られています。
一方で、「核実験」の実態については、日本ではあまり学ぶ機会が多くないかもしれません。しかし実際には、途方もない数の核実験が世界中で行われてきた歴史があり、核兵器の製造や核実験などで被害を受けた「グローバル・ヒバクシャ」と呼ばれる人々が世界中に存在しています。
本コンテンツでは、1945年7月16日にアメリカ合衆国で行なわれた人類初の核実験(コードネーム「トリニティ」、”三位一体”の意)から始まり、翌8月の広島(コードネーム「リトルボーイ」)・長崎(コードネーム「ファットマン」)の原爆投下以降、1998年までの約半世紀の間に実施された計2053回の核実験について、視覚的なアニメーション動画で表現されています。「いつ」「どこで」「どの国」が行ってきたのか、文字情報だけでは決して学ぶことのできない歴史のインパクトを直感的に感じることができます。
学び方
このアニメーションは、シンプルな要素で構成されています。動画の進行は、“1ヶ月”の長さを“1秒”に縮尺した画面右上のカレンダーがベースとなっていて、規則的に奏でられる効果音と共にカウントアップされていきます。
歴史時計の針が進むに合わせて、実際に「核実験が行われた場所」が点滅して世界地図の上にマッピングされていき、地図の外枠には実験を行った国の「国旗」が表示され、それぞれの国の「核実験の合計数」が積み重なっていきます。
アニメーションの冒頭では実験国は「アメリカ」だけですが、時計の針が進むにつれ徐々に「ソビエト連邦(現ロシア)」「イギリス」に加え、「フランス」が登場。やがて、「中国」や「インド」「パキスタン」と続きます。
核実験が行われると、タイムカウントとは別の効果音(=爆発音)が鳴る仕掛けになっています。動画の初めの頃は単発の爆発音が鮮明に聞こえていたものが、やがてその音の切れ目がわからなくなるほど重なり合い、世界各地で核実験が同時に行われていた様子を伺い知ることができます。それらの時期を世界の歴史の流れと照らし合わせて見ることで、「なぜ核実験が競って行われていたのか」を学ぶことにつながります。
例えば、年間で初めて100回を超える実験が行われたのは1958年で、もっとも多かったのは1962年の計178回です。この時期はちょうど「ベトナム戦争」の頃と重なり、アメリカとソ連の代理戦争という戦時下で互いに牽制し合っている様子が、実験の頻度やタイミングからもよく分かります。
※参照データ:判明している世界各地の核実験(1945年~1998年)
本動画では、爆発の伴う実験が条約によって禁止された1998年までの核実験しか描かれていませんが、21世紀となった現在でも、アメリやロシアを中心に核実験が行われ、北朝鮮においては条約を完全に無視した爆発を伴う実験が繰り返し行われています。社会の関心は、核兵器を「作る」ことや「使う」ことの危険性には敏感に反応しますが、「実験する」ことの危険性も同時に認識しておかなければなりません。1945年から約半世紀の間に行われた2000回以上の核実験では、そのエネルギー量は530メガトン(TNT換算)で、広島に投下された原爆の3万5千発以上に相当するとも言われています。(出典:国連科学委員会UNSCEAR Annex B 255頁)
地球上のさまざまな場所で、幾度も繰り返し核実験が行われてきた歴史を学ぶということは、戦争と平和について学ぶのはもちろんのこと、「地球のサステナビリティ(持続可能性)」といった現代的な観点からも改めて考えさせられるテーマと言えます。
参考WEBサイト(英語)