フィンランドの国営放送Yleが制作したオンラインゲームです。ソーシャルメディア上でどのようにデマや陰謀論が拡散するのか、実際に「ネット荒らし」側になってその仕組みを体験することができます。
学びのポイント
- デマや陰謀論が拡散していく仕組みについて
- ソーシャルメディア上に実際に存在するデマや陰謀論について
- フェイクニュースを拡散する際の動機について
対象:小学生〜
SNSが普及し、誰もが手軽に情報発信をできるようになりました。ソーシャルメディア上の情報量が飛躍的に増えると同時に、問題となっているのが「デマ」や「陰謀論」などのフェイクニュースです。日本においても、新型コロナウイルスの感染拡大当初に「トイレットペーパーがなくなる」とのデマやその注意喚起が拡散され、実際に薬局の棚からトイレットペーパーが消えたこともありました。
フィンランドの国営放送Yleが制作したオンラインゲーム『TROLL FACTORY』は、こうした虚偽の情報が実際にどのようにソーシャルメディア上で拡がっていくのかを体験することができます。TROLLは「荒らし」という意味のスラングで、情報操作を意図的に行う「荒らし」の「工場(=FACTORY)」が世界中の至るところに存在することを表しています。
学び方
WEBサイトのURLをクリックするとスマホの画面が現れます。
「TROLL FACTORYへようこそ。ソーシャルメディア上で恐怖や不信感を拡散して影響力を手に入れよう。さて、何人釣れるかな?」
「PLAY」ボタンをクリックするとゲームがスタート。画面上部にはシェア数とフォロワー数が表示されていて、ゲーム開始時にはどちらも「0」に設定されています。
ゲーム上の初日にあたる月曜日に「新規メッセージ」が届きました。開いてみると、ボスからの指令が表示されます。
「君の任務は、移民反対のコンテンツを拡散することだ。実行せよ」
最初の投稿を、次の3つの内から選ぶようにとの指示が入ります。
「国境を守れ!不法入国を止めろ! #ヨーロッパを守ろう #アルプス移民を止めよ」
「リベラルを自称するやつらは隠れイスラム教だ」
「@◯◯◯ 奴ら(移民)は動物以外の何者でもない。おっと、この発言は動物に失礼だったな #くたばれイスラム」
一つを選んで投稿すると、シェア数やフォロワー数が増えていきます。
続いてボスから2つ目の指令が届きました。
「次は感情を刺激するために画像を投稿せよ。もっと注目されるだろう」
このようにして、1つのタスクをこなすと次の指令が飛んできて、特定の人種への差別的な発言や、感情を煽るような画像などを繰り返し投稿することになります。中には、「ターゲットグループを定めよ」という指令によって、メディアの種類やターゲット層を考えさせるプロセスもあります。
「18~29才/不安のある若年層(Instagram)」
「30~45才/子どものいる親(Facebook)」
「46~60才/無職(YouTube)」
ゲームの中で月曜日から順に日付が変わっていき、1週間のそれぞれのミッションをこなすことで、シェアとフォロワー数が変化していきます。そして金曜日が終わると、「ご苦労だった。最初の週が終了した」というボスの労いの言葉とともに、自分が何人のシェアとフォロワー数を獲得したのかが表示され、ゲーム終了となります。
ゲーム終了後には、実際にソーシャルメディア上で同様のフェイクニュースが拡散される仕組みをテキストで学ぶことができます。例えば「アルゴリズムの解説」では、感情に強く訴求するようなコンテンツは、シェアや「いいね」などのリアクションを多く“稼ぐ”ことができ、リアクションが多いほどニュースフィードに多く表示される仕組みになっていると説明されています。投稿への批判的なコメントすらリアクションとして処理されるため、かえって表示される機会を増やしてしまうのです。
また、「ボットを使って影響力を大きく見せる方法」や「フェイクニュースを作成する人の意図」、他にも「実際の出来事を陰謀論として利用する手口」などを学習することが可能です。
そもそも、ゲーム中で使われる投稿文や画像は、実際にSNSに投稿されたもの。今回のゲームでは「反移民」がテーマとなっていますが、意見が二極化しやすく、こうしたデマが拡がりやすい似たテーマとして、「反ワクチン」や「気候変動」などが挙げられています。
社会にとって大切なテーマほどフェイクニュースが拡散されがちな状況ですが、このゲームを通じて自分自身がフェイクニュースを拡散する側を一度経験してみることで、実際にニュースを受信する際のリテラシーの向上が期待されます。
紹介したコンテンツ(英語)