『「カーボンゼロ」実現への道』は、2050年までに「カーボンゼロ(二酸化炭素排出ゼロ)」を達成するための道のりを、WEBサイト上でシミュレーションできるオンラインゲームです。
プレイヤーは「地球環境大臣」となって、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするために政策を駆使し、気温の上昇を1.5度以下に抑えることを目指します。全3ステージ(2022年から2050年まで)に分かれた期間の中で、プレイヤーが選んだ政策の一つひとつが、世界各国の対応や企業の技術革新、市民の意識などにさまざまな影響を与え、カーボンゼロに向けたシナリオが進行していきます。
学びのポイント
- 「カーボンゼロ」というテーマを、ゲーム形式で学ぶことができる
- さまざまな「政策」が、どのような影響を社会や環境に与える可能性があるかを理解することができる
対象
- 「環境問題」を学ぶコンテンツを探している人
- 「カーボンゼロ」について楽しく学びたい人
テレビやメディアなどで耳にしたり目にしたりすることが多くなった「カーボンニュートラル」「脱炭素」といった言葉。これらは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を含めた温室効果ガスの排出量をゼロにする考え方や取り組みのことを言います。
そもそも「温室効果ガスの排出量が増える」と何が問題なのか?
背景には、地球が温暖化することで海面の水位上昇などの気候変動が起き、私たちの日常生活が脅かされるような環境問題を加速させてしまうことが挙げられます。そのため、日本政府は2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出量を全体として実質ゼロにし、カーボンニュートラルを目指す」と宣言しました。
とはいえ、「カーボンニュートラルを目指す」というのは、はたしてどのような状態になることなのか、具体的なイメージを持つのは難しいのではないかと思います。
今回紹介する『「カーボンゼロ」実現への道』は、みなさん自身が地球環境大臣となり、選択肢の中から「具体的な政策」を選ぶことで脱炭素社会を目指すオンラインゲームです。

本ゲームは、イギリスの経済・ビジネス専門の新聞社『フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)』が2022年に作成し、日本経済新聞が日本語化して無料で提供しているものです。
WEBサイトにアクセスしてTOP画面に出てくる「スタート」ボタンを押すと、地球環境大臣に任命されたプレイヤーの目標が表示されます。

「2050年までにエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにし、気温の上昇を1.5度以内に抑えること」、「他の温暖化ガスにも対処し、人類と自然を保護すること」が目標です。
ゲームを進めるにあたり、異なる専門知識を持った4人の専門家の中から「アドバイザーを選ぶ」ことができます。
- 10代の活動家〈ジナ・グリーン〉さん
- 新技術開発を行う起業家〈ウォルド・ワッツ〉さん
- 影響力のあるビジネスパーソン〈デビッド・ディールズ〉さん
- 政策転換を進める政治家〈カタリーナ・コングレス〉さん

4人それぞれの知見からアドバイスしてくれるため、アドバイザーを変えると選択肢の見え方も変わります。但し、アドバイザーによって選択できる政策の内容や効果は変わりません。
今回は10代の活動家〈ジナ・グリーン〉さんをアドバイザーに選び、二酸化炭素排出量の削減を目指します。

それぞれの問いは、ステージごとに7問程度の設問が用意されていて、「電力」「建物」「交通」「産業」の4つの項目に関連した対策を検討していきます。
ゲームが始まると、画面左上には緑色で〈政策ポイント〉の増減、赤色で〈二酸化炭素〉の排出量、白いメモリはゴールまでの「年月の進捗」を示しています。

このゲームのキーとなるのが、緑色の〈政策ポイント〉です。スタート時点では100ポイントが与えられており、政策の選択肢を選ぶごとにポイントが消費されていきます。
例えば、ステージ1の「電力」の項目では、石炭火力発電所への対処について、下記のような3つの政策が表示されます。
- 世界で全ての石炭火力発電所の新規建設計画を停止し、富裕国の石炭火力発電所を閉鎖する。
- 富裕国の石炭火力発電所を10年〜20年かけて段階的に廃止する。
- 市場に任せて石炭需要が自然に減るのを待つ。
そして、それぞれの政策によってどのくらいポイントを消費するかも書かれています。

環境効果が高そうな政策ほど、消費するポイントも高く設定されているため、そのような政策ばかり選択して0ポイントになってしまう(もしくは、ポイントが足りなくて政策が選べない)とその時点でゲームは終了。選びたい政策とポイントの配分を考えながら的確な判断を下していくのが、このゲームの醍醐味のひとつです。
一方で、ポイントは消費されるばかりではありません。選んだ政策の効果が発揮されると、新たに獲得することもあります。


また、「社会全体のバランスを考える」という点も、このゲームの面白さと言えます。「経済的なコスト」「技術的な課題」「社会的な反発」といった問題を考慮しながら進める必要があるのです。
一例として、選んだ政策によっては「CO2削減に成功したけれど、経済が悪化してしまった」という結果になる場合もあります。つまり、単に環境問題を解決するだけではなく、「社会の調和を考える」ということを通して、多角的に「カーボンニュートラル」の問題を知ることができるようにもなっています。
社会全体のバランスを考える評価軸として、〈アワード〉があります。選んだ政策によって植林が成功すると「自然」のアワードが、先進国と発展途上国の脱炭素化格差が少なくなると「平等」のアワードが授与されます。
アワードは、全部で〈仕事〉〈成長〉〈自然〉〈健康〉〈平等〉の5種類があり、獲得するとポイントも付与されるため、それぞれのアワードに繋がりそうな政策を予想することも、カーボンゼロ社会の実現に向けて重要なアプローチになります。

〈ステージ1(2022年~2025年)〉〈ステージ2(2026年~2030年)〉をそれぞれ終えると、ステージごとの評価が出ます。
二酸化炭素排出量をどのくらい減らせたのか。「電力」「建物」「交通」「産業」の項目ごとに選んだ政策のどれが成功で、どれが失敗だったのか。次のステージではどの項目を強化していくべきか。自分の状況に合わせたヒントをもらうことができます。


〈ステージ3(2031年~2050年)〉を終えるとゲームは終了し、全期間にわたる4項目での二酸化炭素排出量を色別で示したグラフと、地球環境大臣としての取り組みが総評されます。

また、目標値だった「1.5度」を基準に、選んだすべての政策の結果、最終的に世界の気温が何度に到達したのかが具体的な数字で表示され、他のプレイヤーとの比較も教えてくれます。

実は、このゲームではポイントが高い政策を選ぶことが、必ずしも温暖化対策の最適解にはなっていません。また、前半のステージでどのような対策をしていたかによって、後半のステージでの効果の現れ方が異なるなど、「時間による投資効果」も加味されています。
アドバイザーを変えてみたり、選ぶ政策を変えてみたり、一度だけでなく、複数回に渡ってチャレンジしてみることで、「カーボンゼロへの道」を多角的に学ぶことができると思います。
「カーボンニュートラル」「カーボンゼロ」「脱炭素」は、言葉だけ聞くと難しく感じてしまいがちですが、気候変動による災害や猛暑、エネルギー問題はすでに私たちの日常生活に大きな影響を及ぼしています。これらは遠い未来の話ではなく、今ある社会をどう未来に繋げていくのかという「現在」の話です。
どのような政策を選ぶのか、なぜその政策に効果があったのか、複数のプレイヤー同士でディスカッションしてみるのも、新しい学びにつながるかもしれません。
ぜひみなさんも「地球環境大臣」になってみて、多様な視点で「カーボンニュートラル」について考えを巡らせるきっかけにしてみてください。

紹介したWEBサイト