概要
このコンテンツは、インターネットのSNS上で発生する「エコーチェンバー現象」について学ぶことができるウェブサイトです。エコーチェンバー現象とは、自分と似た意見があらゆる方向から返ってくる「反響室」のような閉じたコミュニティの中で、自分の意見がより増幅・強化されること。 このウェブサイトでは、SNS上のフォロワー数や、異なる意見への寛容性などによって、具体的にどのようにコミュニティが形成され、もしくは分断されていくのかの様子をシミュレーションすることができます。
学びのポイント
- エコーチェンバーとは何か
- SNS上でコミュニティが形成・分断される構造
- 社会的影響の大きさや寛容性などの違いよる5つのシナリオ
TwitterやFacebook、InstagramなどSNS上では、誰かをフォローし、誰かにフォローされることで世界中を覆う巨大なネットワークが構築され、その中で情報が共有されていくという仕組みになっています。ネットの新しいサービスとしてSNSが登場した当初は、利用者が増えれば増えるほど、世界中のあらゆる人をつなぐプラットフォームになると期待されました。
ところが、実際は「狭いコミュニティ」がいくつも点在し、そのコミュニティ同士は交わることなく、ネット上にできた「タコ壷」に閉じ込められた状態となっています。
本来、自分が心地良いと思うコミュニティの中にいることは、決して悪いことではありません。問題は、そのことに自分自身で気付くのが難しく、エコーチェンバー効果によって日常的に同じ意見ばかりを見聞きしていると、それ以外の情報が間違っているかのように思えてしまうことです。
このウェブサイトでは、異なる意見に対する[許容範囲]や[アンフォローの頻度]などによって、どのようにSNS上のコミュニティが変容していくかを複数のモデルでシミュレーションすることができます。
使い方
シミュレーションの操作方法は簡単です。以下の3つの要素について、各三段階のレベルの中から選択するとシミュレーションが始まります。
- [許容範囲]異なる友人の意見に対する寛容性のレベル
- [社会的影響]友人の意見に対する影響の受けやすさ
- [アンフォローの頻度]フォローを解除する頻度
3つのレベルを設定しシミュレーションが開始されると、SNSの基本構造とも言える「友人の意見から影響を受ける」「意見の合わない友人とは関係を切る(フォローを解除する)」の2つを繰り返すことで、どのように人々の意見が変化していくのかを観察することができます。
シミュレーターの見方はとてもシンプルで、進歩的な意見の[青]と保守的な[赤]の色の違いが「意見の違い」を表し、[線]が「フォロー」を表しています。
最初はバラバラな意見のユーザー達ですが、時には「相反する強い意見を持つ対立関係」が出来あがったり、「偏った意見を持つグループ」を作ったりと、時間と共にさまざまな構造の変化を見せ始めます。
特に[友人の意見に対して流されやすいタイプ]の場合は、自分がつながっている友人の意見の影響を受けやすいため、意見が偏りやすくなります。 また、実際の人間関係のように[意見の合わない友人とは関係を切ること(フォローの解除)]を頻繁に行うほど、自分の意見に近い人とのつながりしか残らないため、[同じ意見のグループ]ができやすくなります。
モデル・シミュレーションを見ていくと、友人の意見に影響を受けたり、フォローを解除したりといった[アクションを起こしやすいユーザー]ほど、偏った意見や、意見の対立を起こしやすくなります。
反対に、周囲の意見に左右されない、フォロー解除をあまりしないといった[アクションを起こしにくいユーザー]ほど、意見は分散し、極端な変化は起こりにくくなるという傾向があります。
いつの時代においても、友人に影響を受けて意見が変わることはあったはずですが、SNS上はこれまでとは全く異なるスピード感で、似ている意見の友人とつながることができる場所です。声の大きい意見に飲み込まれるかのように、とても速いスピードで所属する社会(コミュニティ)全体の意見が大きく変化していきます。
まれに意見が対立しながらも、反対意見との細いつながりがずっと残っていることもありますが、時が経つにつれて、太くつながった多くの友人の意見に影響され、反対意見の友人のフォローを解除してしまいます。その小さな選択が、かろうじてあったつながりを完全に切り離し、やがて分断が生まれていくというわけです。
広大なネット空間を俯瞰することはできませんが、自分がどのような場所にいて、どのように人とつながり合っているのかを想像できるようになることで、「狭いタコ壷」から抜け出す術は見つかるかもしれません。
紹介したWEBサイト(日本語版)