Learning Design Lab. ラーニング デザイン ラボ
#メディアリテラシー学

SNSの情報を“シェアする・しない”の選択を学ぶオンラインゲーム教材

To Share or Not to Share

現在のネット社会において、SNSを活用して情報を“受信”することや、自分の意見や表現を“発信”することは容易にできるようになりました。一方で、SNSが持つ拡散力、影響力は大きく、近年は誤った情報や偽情報の拡散、プライバシーの侵害や個人へのバッシングなどが増加し、SNSの適切な利用が求められています。

この『To Share or Not to Share』は、そんなSNS上における情報の「受発信」のあり方について、ゲームを通じて楽しく学ぶことができるオンラインゲーム教材です。現実のSNSを模した仮想のタイムラインに流れてくる投稿を見て、他の人たちが関心を持ちそうな投稿をシェアすることで、フォロワー数を増やすことを目指します。

ただし、“誤情報・虚偽情報”をシェアすると、フォロワー数が減る仕組みとなっています。ゲーム後には、クラスメートや過去の参加者との比較を通じて、日頃の自身の情報の受け取り方、発信の仕方について振り返ることが可能です。

仮想のSNSタイムラインに流れてくる投稿を見てどうアクションをするかを選択します

ゲームの流れ(プレイヤー)

  1. スタート時のフォロワー数は100人
  2. 表示される投稿を「シェアする・(友達・家族に)限定シェアする・しない」の3つから選択
  3. 次に、その投稿を「☆1 全く信頼できない」から「☆5非常に信頼できる」までの情報の「信頼度」を選び、その理由を回答
  4. 情報を多くの人に拡散することで、フォロワー数が増加
  5. 投稿の中にはフェイクニュースが隠れていて、それを拡散するとフォロワー数が減少
  6. ゲーム終了時に、最終フォロワー数と、他のユーザーが選択した行動の割合や判断理由を閲覧することが可能

このゲームの特徴は、使われているすべての投稿が「過去のSNS上でリアルに投稿された情報」を教材にしているところです。日頃、SNSを使っている感覚で、気になる投稿を調べながらシェアするかどうかを判断したり、あるいは、実際の投稿への反応なども見ることができます。

情報を読み解くポイントは、いろいろな観点から、クリティカル(批判的)に考えること。同じ情報であっても、人によって受け止め方はさまざまであることを認識する必要があります。

また、たとえ発信元が公式アカウントであっても、意図せず“誤”情報を発信している可能性もあります。「公的機関が発信しているから間違いない」という先入観を持たないように取り組むことが大切です。

例えば、<アザラシが網に絡まっている画像とともに、環境問題について呼びかける>というような投稿の場合、「環境問題を周囲に知らせたい!」との理由でシェアを選ぶ人がいる一方、「アザラシが可哀想、こんな画像をみると悲しくなる。人を悲しい気持ちにさせるネガティブな投稿はしたくない」という理由で、シェアしない判断をする人もいるかもしれません。

「面白ネタ」「ジョーク的な」投稿の扱いも、判断が難しいケースです。情報を発信・シェアする側が「明らかに嘘で、ネタとして楽しめる」と思った場合でも、受けとる側は「事実」と捉えてしまうこともありえます。

シミュレーションゲームに参加して気づいたことの回答結果(スマートニュースメディア研究所による出前授業の参加者の集計、2022年末時点)

この教材のもうひとつの特徴として、デジタルメディアにおいて広く使われている「アルゴリズム」について学ぶきっかけとすることもできます。たとえば、フォロワー数の増減に使われているアルゴリズムに着目して、「フォロワー数の最大を目指すにはどうしたらいい?」「最低を目指すには?」など、ゲーム感覚で取り組むことも可能です。

現在のSNSや動画の“オススメ”では、閲覧履歴などから似たような意見やコンテンツを表示する「レコメンド」のアルゴリズムが使われています。同じような情報が表示される状態を「フィルターバブル」と言いますが、つまり、泡の中に閉じ込められ、外の情報から遮断されている状態のことです。知らず知らずのうちに、自分の情報空間が「自分好みの情報」だけに囲まれているということを意味します。

誤情報や偽情報などが瞬時に拡散され、社会的分断も危惧されている中、私たちは自分の意見や嗜好を裏付ける「見たい情報」だけの偏った収集になっていないか、改めて情報の「受発信のあり方」を考える機会にぜひこの教材を活用してみてください。

学びのポイント

  • SNSに投稿された情報の受発信のあり方について
  • メッセージの信頼性について
  • SNSに使われているアルゴリズムについて

紹介したシミュレーションゲーム教材

To Share or Not to Share

掲載日

執筆:LearningDesignLab編集部

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