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#メディアリテラシー学

フェイクニュースという言葉を使わず考えてみよう

フェイクニュースという言葉を使わず考えてみよう ー 10種類の情報区分

概要

このワークシートは、ヨーロッパでメディアリテラシー教育を推進する非営利団体EAVIが作成した授業用教材を、日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が日本語訳したものです。近年、社会問題化している「フェイクニュース」についてのリテラシーを高め、さまざまなニュースの種類を見分けることに役立ちます。

学びのポイント

  • フェイクニュースとは何かについて
  • フェイクニュースの10種類の分類方法について
  • 各ニュースの影響度とその動機について

現代のメディア環境におけるイシューとして、フェイクニュースが大きな社会問題となっています。誰がそんなニュースを流すのか。どうやってフェイクニュースに騙されないようにするか。ファクトチェックはどう行うかなど、さまざまな憶測や議論がなされています。

一方で、「信頼できない情報」をすべて“フェイクニュース”と一括りにしがちな現状があります。実際には、[記事広告]や[プロパガンダ]、[ミスリーディングな画像][善意で拡散される誤情報]など、社会に混乱をもたらす情報にはさまざまな種類が存在しています。それらの情報をすべて「フェイクニュース」という言葉で表現してしまうことは、ただ疑心暗鬼に陥るばかりで、情報を精査することにはつながりません。受け取ったニュースを丁寧に分類しながら、情報感度を高めていくのがこの教材の目的です。

使い方

この教材は、授業で“先生の説明”と共に使用される前提で作られていますが、個人がこのシートの分類法を理解するだけでも、十分な学びになります。メディアリテラシー教育を進めていく場合でも、情報には「リアル」と「フェイク」の2種類しかないという考え方では、単純な議論しかできません。そこで、以下のように分類されている「10種類の情報区分」をもとに、それぞれのニュースがどの区分に相当するかを検証してみることで、議論が深まっていきます。

プロパガンダ

  • 政府、企業、NPOなどが、人の意識や価値感、知識に影響を与えるための手段 
  • 感情に訴えてくる 
  • 利益になることもあれば、 害を及ぼすこともある 

[影響力]場合による [動機]情熱、政治/権力

釣りタイトル

  • 本質から外れた、刺激的で目立つ見出し 
  • 見出しが内容を反映しておらず、 誤解を与えやすい 
  • 広告収入を得るために利用される

[影響力]低 [動機]金銭、ユーモア/冗談

スポンサードコンテンツ

  • 記事に見せかけた広告 
  • 報道機関と利害の対立を生むことがある 
  • 明示されていなければ、 広告だと見抜くのは難しい 

[影響力]低 [動機]金銭

風刺、架空の話

  • 社会批判またはユーモア
  • 内容はさまざまで、意図が明確でないことも
  • 事実と混同され、読者を困惑させる 

[影響力]低 [動機]ユーモア/冗談

誤報

  • 定評ある報道機関も間違えることがある 
  • 誤報はブランドを傷つけ、怒りを買う。訴訟になることも 
  • 信頼できる報道機関であれば、 誤りを認めてお詫びする 

[影響力]低 [動機](誤)情報の伝達

党派的情報

  • イデオロギー的で事実の解釈を含むが、中立を装っている 
  • 自分たちに都合の良い事実を強調し、それ以外は取り上げない 
  • 感情的で情熱的な言葉を使う 

[影響力]中 [動機]情熱、政治/権力

陰謀論

  • 恐怖や不確実さから、複雑な現実を単純化して説明しようとする
  • 間違いだと証明しづらく、反証すると陰謀論の信頼性が増してしまう 
  • 専門家や当局情報を否定する  

[影響力]高 [動機]情熱、(誤)情報の伝達

ニセ科学

  • 見せかけの環境保護活動、奇跡の治療法、ワクチンの拒否、地球温暖化の否定
  • 正しい科学的研究を、大げさな、またはうその情報でねじ曲げる
  • たいてい専門家の意見と矛盾する

[影響力]高 [動機]政治/権力、金銭

誤情報

  • 事実と間違いが入り交じったコンテンツ
  • 情報を伝えたいと思っているが、作成者が誤りに気づいていないこともある 
  • 誤った引用、不適切に加工されたコンテンツ、誤解を招く見出し

[影響力]高 [動機](誤)情報の伝達

偽情報

  • 人をだます目的で広く拡散する、完全なねつ造コンテンツ 
  • ゲリラマーケティング戦略、ボット、 コメント、なりすましブランド 
  • 広告収入目当てか、政治的な影響を与える目的、または両方 

[影響力]高 [動機]政治/権力、金銭

これらの情報は、それぞれに影響度が異なり、上から下に行くほど「影響度が増す」という評価になっています。また、[金銭]や[ユーモア][情熱]などそれぞれのニュースを作成する「動機付け」の分類もされているので、ひとつの目安として参考にしてみてください。

最後に、このツールを使う上で大事なポイントは、10種類の区分は「どれも独立したものではない」という理解に立つことです。[極端に偏った政治的情報]を流すサイトは[プロパガンダ]とも言えるかもしれませんし、[プロパガンダ]は[スポンサー記事]として私たちの目に触れることもあります。一方、[ニセ科学]や[陰謀論]には相関関係があり、同様に[完全なねつ造コンテンツ]は[釣りタイトル]で読者の気を引こうとします。

このように、事例として扱う情報がどのカテゴリーに分類されうるのか、できるだけ柔軟に多様な意見が出るようにこのツールを使って議論を促すことが重要です。

掲載日

執筆:LearningDesignLab編集部

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